
【スクリプト付き】SES営業のクレーム対応術
例えば、提案段階で顧客の要件を正しく把握できていなかったために提案内容にズレがあった、あるいはエンジニアが長期間休暇しているなど、顧客から厳しい指摘やクレームを受けることがあります。
こうしたクレームをいかに上手く対応できるかが、プロジェクトの成否を左右する大きなポイントになります。
冷静な対応と問題の原因究明、適切な解決策の提示、そして再発防止に向けた取り組みを怠ると、顧客の信頼を裏切ることにもなりかねません。
一方で、適切なクレーム対応を行えば、かえってお客様との信頼関係を深め、良好な関係を構築できる好機ともなり得ます。
本記事では、SES営業におけるクレーム対応の重要ポイントと、具体的な対応スクリプトをご紹介します。
1. クレームを未然に防ぐための対策.
最も重要なことはクレームになることを未然に防ぐことです。
特にSES営業においては以下の4点に注意してクレームにならないように対策しておきましょう。
1-1. 案件内容の入念なヒアリング
提案の段階から顧客の本当の要件やニーズを把握し、認識の相違がないか確認することが不可欠です。
ヒアリングではスキルセットを聞き出すのではなく、プロジェクトの状況や難易度、どのような役割を期待されているのか確認し、ヒアリング不足によるスキルのミスマッチを防ぐことがポイントです。
具体的には、以下の質問事項を事前に準備し、顧客に対してヒアリングを行うことで認識のズレを防ぐことができます。
・プロジェクトの概要と目的
・アーキテクチャと導入ツール
・チーム構成やプロジェクト期間
・求められるスキルセットと期待される役割
・ステークホルダーの関与範囲と要求の優先順位
・マイルストーンとレビュー体制
1-2. プロジェクトの進捗状況の報告
契約締結後も、定期的にエンジニアからキャッチアップしたプロジェクトの進捗を顧客に報告し、認識齟齬がないことを確認することが大切です。
もし、遅延が発生した場合は、速やかに報告し、顧客に理解を求める必要があります。進捗の見える化と、遅延時の早期対応が、顧客からのクレームを未然に防ぐ対策になります。
プロジェクトの進捗報告では、以下の内容を伝えることをおすすめします。
・完了したマイルストーン
・次のマイルストーンの作業
・予定工数と実績工数
・発生した課題とその対応策
・リスクとその対策案
・品質状況(バグ発生件数など)
報告の方法としては、週次・月次の定例会議または、メールでの報告も顧客の時間を奪わないため効果的です。
もし、遅延が発生した際は、顧客に対して、以下のような報告を心がけましょう。
「○○の理由により、当初の予定からn週の遅延が発生する見込みです。
遅延の解消に全力を尽くしますが、最悪の場合は作業期間をn週間ほど延長せざるを得ない状況です」と、状況を隠さず、できる限り早期に報告し、顧客の協力を得ることが大切になります。
1-3. エンジニアのパフォーマンスレビュー
システム開発の品質管理を徹底し、不具合の発生を抑えることも大切です。
具体的には、ウォークスルーの徹底やダブルチェックのプロセスを設けるなどで品質を担保することができます。
一般的なシステム開発における品質管理のポイントは以下の通りです。
・コーディング規約の遵守
・ステージング環境での動作確認
・ユニットテストやインテグレーションテストの実施
・自動テストの導入
・セキュリティ診断の実施
・インシデント管理プロセスの構築
・ソースコード/アプリケーションの脆弱性検査
SES営業だけでは説得力に欠けるようであれば、技術部門の上長やエンジニアリーダーに協力を得て開発に携わるエンジニアのスキルレビューと教育を行い、一定の品質を保つ体制を構築しましょう。
このように社内で十分なレビュープロセスとテストを経て顧客に納品することをルール化することも有効です。
1-4. 顧客との定期的なコミュニケーション
顧客との日頃のコミュニケーションを活発にし、相互理解を深めることが何より肝心です。
プロジェクトの節目で打ち合わせの機会を設け、プロジェクトの進捗のみならず、顧客の経営課題や要求の変化などについても情報共有し、認識のずれを修正していく必要があります。
信頼関係が築けていれば、何かトラブルがあった際も顧客からの協力を得やすくなります。
プロジェクトレビューでは以下の観点を顧客とともに確認することが重要です。
・プロジェクトの目的とアウトプットの再確認
・チームメンバーのパフォーマンス評価
・プロジェクトで発生した問題と解決策
・プロジェクトから得られた学びと教訓
プロジェクトレビューを通じて、プロジェクトの方向性を適宜調整していくことが肝心です。
2. クレームが発生した際の対応方法.
クレームが発生した場合、冷静な対応が何より大切です。感情的になったり、慌てたりすると相手に誠意が伝わらず逆効果になります。
まずは顧客の気持ちに共感して耳を傾けることを心がけましょう。
例として、エンジニアがパフォーマンスを出せずにプロジェクトが遅延してしまった場合、「この度は大変申し訳ございませんでした。
プロジェクトをお待たせしてしまい、顧客様には多大なるご迷惑をおかけして誠に申し訳ありません」このようなお詫びから会話をスタートすることで、クレームについて真摯に向き合う姿勢が顧客に伝わります。
そして、「プロジェクトの遅延について、改めて状況を確認させていただきます」と伝え、実際の原因究明の前に言い切る発言は避けましょう。
関係者へのヒアリングが終わるまで想像で話してしまうと混乱を招きます。
3. 原因究明と解決策の提示.
クレームの事実関係を冷静に受け止め、次は原因の特定に移ります。
原因の究明こそ、解決への第一歩となります。原因分析は、以下のような手順で進めると良いでしょう。
1.関係者への事実確認
2.作業記録やデータの確認
3.関係部署との情報共有
3-1. 関係者への事実確認
まずは、プロジェクトに携わったエンジニアやプロジェクトマネージャー、顧客担当者など、関係者全員からヒアリングを行い、事実関係を正確に把握する必要があります。
それぞれの立場から見た状況を集めて、偏りのない事実確認をしましょう。
3-2. 作業記録やデータの確認
次に、プロジェクトで実際に発生した作業記録やデータ、ドキュメントなどの確認を行います。
作業実績やテストの途中経過、顧客とのやり取りの記録など、具体的な証跡を分析することで、発生した問題の実態をつかめます。
3-3. 関係部署との情報共有
プロジェクトに直接関わっていない部署にも、原因の手掛かりがある可能性があります。
例えば、エンジニアが所属する技術部門の上司にも協力を仰ぎ、エンジニアの熟練度や稼働状況の情報があれば、技術的な観点から原因を推測できるかもしれません。
関係部署と情報を共有し、多角的な視点で検討することが重要です。
このように、さまざまな切り口から原因を分析した上で、顧客に解決策を提示します。
「お客様のご指摘の件ですが、○○が主な原因であると考えられます。早急に△△の対応をとらせていただきますので、どうかご安心いただけますと幸いです」
また、指摘された問題点への回答と併せて、再発防止に向けた取り組み姿勢も示すと良いでしょう。
「今回の件を重く受け止め、同様の事態が発生することのないよう再発防止に努める所存です」
このように、原因究明に基づく適切な解決策と、再発防止に向けた具体的な対応を示すことで、顧客への信頼回復につながります。
4. まとめ.
SES営業においてクレームは避けられない課題です。
しかし、適切なクレーム対応こそが、顧客との信頼関係を一層強固なものにする好機となります。
クレームへの対応で最も重要なことは、まず冷静に顧客の気持ちに共感し、耳を傾けることです。
感情的にならず、事実関係を丁寧に確認し、原因を特定することが解決への第一歩となります。
そして、原因に基づいた適切な対処方針と再発防止策を提示し、誠実な対応を示すことが肝心です。
SES営業では、技術的なスキルはもちろんのこと、クレーム対応力が顧客満足度を左右する大きな要素となります。
本記事で解説したポイントを参考に、お客様との信頼関係を築き上げていってください。