アジャイル開発は日本では普及しない?そのメリット・デメリットを分かりやすく説明

アジャイル開発は日本では普及しない?そのメリット・デメリットを分かりやすく説明

 発売日: 2025/3/31 更新日: 2025/2/20
アジャイル開発は、プロジェクトを小さなステップに分割し、柔軟に変更を受け入れながら進めるシステム開発の手法です。

従来の「ウォーターフォール型」開発とは異なり、アジャイルでは顧客のフィードバックを取り入れながら、継続的に改善を行います。


しかし、ネットで「アジャイル」と検索すると日本では普及しないという記事をよく目にします。

では、アジャイルはなぜ日本で普及しないと言われているのか?

本記事では、アジャイル開発のメリットとデメリットを解説し、なぜ日本で普及が遅れているのかその理由を分析していきます。

1. アジャイル開発とは.


従来の「ウォーターフォール型」開発では、要件を全て固めてから開発に着手するため、要件が変わると大がかりな設計変更が必要でした。

一方のアジャイル開発は、短いサイクルで要件を見直し、柔軟に設計変更ができるのが大きな特長です。


そのため、アジャイル開発は、従来の開発手法に比べてよりソフトウェアの品質を高め、顧客の要求に応えやすいという利点から、近年世界的に広く採用されています。

2. アジャイル開発の進め方.


アジャイル開発には、スクラム、XP(Extreme Programming)、カンバンなど、いくつかの手法がありますが、いずれの手法でも、以下の進め方がベースとなります。

 1. プロジェクトの開始
 要件をざっくりとまとめ、作業の優先順位を決めます。

 2. スプリントプランニング
 優先度の高い機能から、1〜4週間程度の「スプリント」と呼ばれる期間で実装する範囲を決めます。

 3. デイリーミーティング
 メンバー全員が進捗を共有し、課題を話し合うスタンドアップミーティングという15分程度の簡単な打ち合わせを毎日行います。

 4. スプリントレビュー
 スプリント期間が終了したら、実装した機能のレビューを行います。顧客から要望をフィードバックしてもらいます。

 5. スプリントレトロスペクティブ
 スプリントを振り返り、改善点を洗い出します。次のスプリントの計画に反映させます。

 6. 繰り返し
 計画・実装・レビュー・改善のサイクルを繰り返し、要件の変更に柔軟に対応しながらソフトウェアを製品化していきます。

3. アジャイル開発のメリット.


1.顧客の要求に素早く対応できる

アジャイル開発では短期間で成果物を実現できるため、顧客の要求変更に対してタイムリーに対応することができます。
要件が固定されるまで開発が進まないウォーターフォール型と比べて、顧客満足度が高くなります。

2.高い品質のソフトウェアが開発できる

頻繁にレビューを行うことで、要件の齟齬や設計の誤りなどを早期に発見・修正できます。その結果、納品時の不具合が減り、高い品質が実現できます。

3.チーム力が高まる

アジャイル開発では密なコミュニケーションが重視され、開発チームが自律的に機能することが前提となります。
そのため、個人の成長とチームワークの向上が図れます。

4.リスク回避が可能

計画的に進めるため、早期の段階からリスクを発見し、回避策を立てられます。
開発の遅れなどを防ぐこともできます。

4. アジャイル開発のデメリット.


1.要員のスキルが高くなくてはいけない

アジャイル開発をうまく機能させるには、メンバー一人ひとりの高い専門性と自主性が求められます。中でもプロジェクトマネージャーの役割が重要で、高度な調整力が必要となります。

2.長期的な計画が立てにくい

要件が柔軟に変更されるため、はじめから詳細な工数の見積もりが難しくなります。長期のプロジェクト計画を固めづらいといったデメリットがあります。

3.ドキュメンテーションに手間がかかる

頻繁にレビューとドキュメンテーションを行うことから、記録作業に手間がかかり余分な工数を要する場合があります。

4.顧客の協力が不可欠

アジャイル開発では、開発の各フェーズで顧客の意見を反映させることが前提となります。そのため、顧客の理解と協力が不可欠です。

5. 日本でアジャイル開発が普及しにくい理由.

日本においてアジャイル開発の普及が進まない理由として、以下の点が指摘されています。

1.日本は上意下達の文化が根強い

上意下達とは上位の者の意志や命令を、下位の者に徹底させることです。

日本の企業文化では、上意下達の形で開発要件を固め、その通りに実装することが多いです。

そのため、柔軟な要件変更を前提とするアジャイル開発の発想が、なかなか浸透しづらいようです。

2.ウォーターフォール型の習慣が残る

日本のシステム開発の歴史として、長年ウォーターフォール型の開発手法に慣れ親しんできた企業が多いことも要因の一つです。

多くの日本企業は実績のあるものの方が受け入れられやすく、新しい手法を取り入れるリスクを避ける風潮があり、アジャイル開発への移行が進みにくい状況にあります。

3.人材の質と量が不足

日本では優秀なエンジニアの人口が少なく、アジャイル開発に対応できる高いスキルを持つ人材が不足していることも普及の障壁となっています。

また、アジャイル開発の要となる熟練のプロジェクトマネージャーをアサインするのが難しいケースも多いでしょう。

4.顧客との密な連携が課題に

顧客の理解とフィードバックが不可欠なアジャイル開発では、日本の企業文化における顧客との関係性が、課題になっている面があります。

顧客が多忙でフィードバックが受けられなかったり、プロジェクトの課題に対して協力的でない場合、開発が難航するリスクがあります。


日本でアジャイル開発を浸透させるには、顧客との信頼関係をさらに深める必要があるでしょう。

このように、日本ではアジャイル開発の導入に様々な障壁があり、普及が進みづらい状況にあります。

6. アジャイル開発を成功に導くためには.

しかし、一方でベンチャー企業やスタートアップ、一部の大手IT企業を中心に、アジャイル開発への取り組みが徐々に増えてきています。

企業文化の変革や人材育成などを通して環境を整備し、クオリティの高いソフトウェア開発を実現するため、アジャイル開発の導入は避けて通れない課題となりつつあります。


日本文化でアジャイル開発を円滑に進めて成功させるためにはどういったポイントに気をつければ良いのでしょうか?

アジャイル開発の効果を最大限に引き出すための7つポイントを解説します。

7. さいごに.

情報社会でビジネスニーズやビジネスチャンスが日々変わっていく最中、従来のプロセスでは限界が見えている日本企業の開発現場でも、今後はアジャイル開発の考え方を取り入れていく動きが加速すると予想されます。

SES営業の皆さんは、プロジェクトの特性に合わせて柔軟に手法を選択し、スピーディーな開発とクオリティの両立を目指すことが求められていくでしょう。


アジャイル開発は、単に手法を導入するだけではなく、組織文化の変革と人材育成、顧客を含めた関係者全体での取り組みが肝心です。

上手く実践できれば、高い顧客満足度と高品質なソフトウェアを実現できる有力な手法だと言えるでしょう。