
SES営業なら誰しもが経験するSES業界の暗黙ルール
しかし、営業現場には様々な暗黙のルールが存在し、初めてこの業界に足を踏み入れた者にとっては戸惑うことも多いでしょう。
この記事では、SES業界で活躍してきたSES営業が失敗から学んだ暗黙のルールを解説します。
これらのルールは、業界に身を置く者なら誰しもが経験するもので、ルールの背景を理解し、適切に対応することが求められます。
1. 並行営業する際は顧客に伝える.
SES営業では、1人のエンジニアを複数の案件に並行して提案することがあります。
これは1つの案件だけで進めてしまうと、ミスマッチだった場合にエンジニアの仕事がなくなってしまうリスクを避けるためです。
これを「並行営業」と呼びます。
並行営業そのものは問題ありませんが、無作為に営業活動を行うと、クライアントに不信感を抱かれる恐れがあります。
そこで重要なのが、並行営業を行う場合は、あらかじめクライアントに伝えることです。
『並行営業中の技術者となっておりますので、採用連絡が早く出た方の案件を優先させて頂く可能性がございます』といった具合に、丁寧に説明をする必要があります。
これを怠ると、クライアントから悪い印象を持たれて案件の話が来なくなったり、そのエンジニアが参画する方向で勝手に話が進められてしまうなどトラブルの原因となります。
そのため、SES営業の暗黙のルールとして、並行営業の場合は必ず事前にクライアントに伝え、了承を得ることが求められます。
2. 商流を無視した提案.
例)
エンド企業A → 元請け企業B → 下請け企業C → SES企業D(IT技術者)
右に行くほど「商流が深い」と表現され、エンドユーザーとIT技術者の間に多くの企業が介在している状況を指します。
商流を無視した提案とは、この多重下請け構造を無視し、エンドユーザーとIT技術者が直接契約する形を提案することを指します。
しかし、この提案には注意が必要です。なぜなら、商流を無視すると仲介料で収益を得ている「元請け企業B」や「下請け企業C」が良い顔をするはずがないからです。
こうした商流を無視した契約を「商流飛ばし」と呼ばれ、IT業界では御法度とされており、同業者からの信頼が失墜します。
したがって、商流を無視した提案を行う際には、これらの点を十分に考慮する必要があります。
3. 必ず商流を確認する.
商流の概念は前章で説明したとおり、SES企業は必ずしもエンドユーザーの企業と直接契約ができる訳ではありません。
人の入れ替わりが激しいSES業界ではクライアントとの信頼関係が大切であり、既に強い繋がりがあるエンド企業とSES企業がいた場合、新規参入が難しいという特性があります。
しかし、クライアントが求めるレベルのエンジニアが既に別のプロジェクトに参画していたり、ニッチなスキルが求められる場合は自社のリソースでは確保できない場合もあります。
そうした場合、他のSES企業からスキルマッチするエンジニアを調達することが往々にしてあり、これが多重下請けの背景の一つとなっています。
商流が深い位置にいるSES企業の場合は、何かエンジニアにトラブルがあった場合や交渉したい場合、直接エンド企業とアポイントがとれないため情報伝達やリスクのキャッチアップに時間がかかります。
そのため、案件の相談があったときは必ず商流を確認し、プロジェクトの内容が複雑であり、商流が深い場合は見送るという判断も必要です。
クライアントの中には管理のしやすさや、リスクを避けるために商流を制限している案件もあるため、自社でエンド企業と取引きする場合も同様に商流制限がないかチェックしておきましょう。
4. 精算時間の上限・下限.
SES業界には、IT技術者の派遣に関する精算のルールが存在します。
つまり、技術者が顧客先に常駐して働いた実働時間に対し、請求する上限時間と下限時間が決まっているのです。
例えば、精算上限180時間、下限が140時間の準委託契約をしている術者Aさんが顧客先で実働200時間働いたとします。
この時、SES会社が顧客へ請求できる上限時間は180時間となっているため、月額単価を時間換算した金額×20時間の追加料金を請求することができます。
精算時間は案件によって異なりますが、一般的には上限180時間、下限が140時間であることが多いです。
逆に、休暇で勤務日数が少なく下限の140時間を下回ってしまった場合は減額されてしまうため、SES営業はIT技術者の稼働時間を気にかけておく必要があります。
こうしたルールを知らないと、万が一契約書に精算時間が記載されていなかった場合にトラブルになってしまいます。
5. 退任は1ヶ月前までに通知.
準委任契約は単月〜3ヶ月といった短期間での契約となることが多く、エンジニアがプロジェクトから退任する際には、通常1ヶ月前までに通知することが求められます。
これは、SES企業やクライアント企業が新たなエンジニアを探す時間を確保するため、また、現場の業務に影響を与えないようにするためです。
しかし、クライアントの中には1ヶ月を切って今月で契約を終了したいと告げられる場合もあります。
その場合、残りの少ない期間でエンジニアの次のプロジェクトを探さなければならず、SES営業は契約満了の1ヶ月前には、契約期間の延長の有無を確認をしておく必要があります。
6. 募集要項が広い案件は注意.
SES業界では、クライアント企業が求めるエンジニアのスキルセットを「募集要項」として明示します。
しかし、募集要項があまりにも広範であると、それはクライアント企業が何を求めているのか明確でない、あるいは、クライアント企業自体がITの専門知識を持っていない可能性を示しています。
このような場合、エンジニアが現場に配属されてからスキルミスマッチが発生し、結果的にエンジニアが退任するという問題が生じる可能性があります。
そのため、SES営業としては、募集要項が広範である案件に対しては注意が必要です。
具体的には、クライアント企業とのコミュニケーションを通じて、具体的なスキル要件を明らかにし、適切なエンジニアを提案することが求められます。
スキルセットの明確化はSES営業のもっとも重要な部分であり、エンジニアがミスマッチで短期で契約終了とならないためにも必ずヒアリングをしましょう。
7. まとめ.
SES営業なら誰しもが経験するSES業界の暗黙ルールについて解説しました。
SES業界で成功するためには、これらのルールを理解し、適切にコントロールすることが大切です。
しかし、SES業界は技術の進歩と共に常に進化しています。
新しい技術やビジネスモデルが登場することで、暗黙のルールも変わる可能性があります。
そのため、SES営業は、業界の動向に常に注意を払い、柔軟な対応が求められるでしょう。
そして、SES営業は、クライアントとの信頼関係を築くことが最も重要です。信頼関係があれば、多くの暗黙のルールをスムーズに進めることができます。
この記事がこれからSES業界に足を踏み入れる方々にとって、参考になれば幸いです。