
SESと派遣はどう違う?SES営業が知っておくべき契約形態を解説!
準委任契約、委任契約、派遣契約、請負契約とさまざまな契約形態があるため、混同されやすいですが、それぞれ明確な違いがあります。
この記事ではSES営業なら知っておくべきIT業界の契約形態を丁寧に解説していきます。
1. 準委任契約とは.
準委任契約は、IT技術者がクライアントに技術を提供し、働いた時間や期間で報酬を得る契約形態です。
IT業界では頻繁に採用されている契約形態で、成果物責任(成果物に対して責任を負わせることができるかどうか)が問われない点が特徴です。
例えば、ウェブ開発者がある企業のウェブサイトの開発を担当する場合、その開発者は自分が働いた時間に基づいて報酬を得ます。
この場合、開発者は特定のタスクを完了するために必要な時間をクライアントに報告し、その時間に基づいて報酬を受け取ります。
しかし、この契約形態では、開発者は成果物の品質や完成度に対して直接的な責任を負わないという点が特徴的です。
つまり、ウェブサイトが期待通りのパフォーマンスを発揮しなかった場合でも、開発者はその結果に対して責任を問われることはありません。
これは、ITプロジェクトが複雑で予測不可能な要素を多く含むため、開発者が全ての結果に対して責任を負うことは公平ではないという考え方に基づいています。
ただし、準委任契約は民法上、善管注意義務という義務が発生し、その労働者の役割として一般的に期待されている水準を満たすというプロとして注意を払う必要があります。
2. 委任契約とは.
委任契約とは準委任契約と殆ど同じ内容の契約形態ですが、一番の大きな違いは法律業務を行うかどうかです。
通常、委任契約とは、一方の委託者が他方の受託者に対して、特定の法律行為を代理として行うことを依頼し、受託者がこれを引き受ける限定的な契約を指します。
この契約形態では、受託者は委託者のために法律行為を行い、その業務に生じた時間や期間に対して報酬を得ます。
弁護士が分かりやすい例ですが、慰謝料を希望した金額の半分しか得られなかったとしても、仕事をした時間分の費用は払わなければなりません。
3. 派遣契約とは.
派遣契約は、人材派遣会社から顧客企業に労働者を派遣する契約形態です。
派遣労働者の雇用主は派遣会社であり、給与の支払いや社会保険の手続きなどは派遣会社が行います。
顧客企業は、派遣会社と業務委託契約を結び、派遣料金と一定の管理費用を支払うことになり、派遣労働者と顧客企業との間で金銭のやり取りはありません。
準委任契約の大きな違いとして、派遣会社は業務指示や勤務管理は顧客企業が行いますが、準委任契約や委任契約は顧客企業からの指揮命令はありません。
例えば、派遣労働者が顧客企業での業務について質問や問題がある場合、その指示や解決策は顧客企業から直接提供されます。
しかし、派遣労働者が雇用条件や給与について問題を抱えている場合、その問題は派遣会社が解決する必要があります。
これらの特性により、派遣契約は企業にとって柔軟性を提供し、労働力の需要の変動に対応する一方で、派遣労働者には不確実性が伴うこともあります。
したがって、派遣契約は、企業と労働者双方がその利点と欠点を理解し、適切に管理することが重要です。
4. 請負契約とは.
請負契約は、発注者である顧客企業から特定の成果を達成することを依頼され、労働者である請負人はその成果に対して報酬を得る契約形態です。
この契約形態では、準委任契約と異なり、成果物責任が生じ、請負人は成果物の品質や完成度に対して直接的な責任を負います。
つまり、納品した成果物が契約条件を満たしていない場合、請負人はその改善や再作成を求められることがあります。
一見、請負人に不利で企業に有利な契約に思われますが、品質を担保するために準委任契約と比べて報酬が高いことが多く、また請負人はスケジュール管理や予算管理がしやすいというメリットがあります。
ただし、途中でシステムの仕様や要件が大きく変更となった場合は別途契約を締結し直す必要があり、準委任契約と比べると柔軟性が低いことが挙げられます。
5. 4つの契約形態の違い.
準委任契約(委任契約)、派遣契約、請負契約それぞれ解説しましたが、主な違いを表にまとめましたので参考として下さい。
・準委任契約(委任契約)
成果物責任:×
顧客の指示系統:×
顧客への提供物:労働力
・派遣契約
成果物責任:×
顧客の指示系統:◯
顧客への提供物:労働力
・請負契約
成果物責任:◯
顧客の指示系統:×
顧客への提供物:成果物
続いて、SES営業として知っておくべきSESのメリットとデメリットを解説します。
6. SESのメリット・デメリット.
SESのメリット・デメリットについてご説明します。
6-1. SESメリット1.顧客企業のメリット
SESは、企業が必要とする特定のスキルや知識を持つIT技術者を一時的に借りることができるため、自社でIT技術者を雇用するよりも低コストで高品質なサービスが利用できます。
また、仕様変更が発生しそうなプロジェクトであったり、管理が難しい大規模なプロジェクトの場合は、必要な期間だけ労働力を確保できる柔軟性の高いSESが向いていると言えます。
6-2. SESメリット2.労働者のメリット
さまざまなプロジェクトで働くことができるため、常に新しい知識やスキルを習得し、自分が伸ばしたいスキルを強化することができます。
上場企業や大規模なプロジェクトにアサインされれば、最先端の技術を学べたり、レベルの高い人と肩を並べて仕事ができるため、マインドセットが高まります。
特にSESは成果報酬ではないため、エンジニア未経験者でも採用されやすかったり、すでにプロジェクトにノウハウが残されている場合が多く、初級エンジニアでも活躍できる仕事があることもメリットです。
また、労働時間に対して対価が発生するため、企業側はできるだけ契約時間内で収まるように仕事をアサインしようとするため、正社員より残業が発生しにくいという点もSESの特徴です。
6-3. SESデメリット1.顧客企業のデメリット
採用したIT技術者がプロジェクトで求められている知識やスキルが要求を満たしていなかったり、パフォーマンスが出ない場合があります。
採用面談でIT技術者の能力が正しく測れず、経歴だけで判断してしまうとミスマッチが起きてしまうため、企業側の人選が重要になってきます。
6-4. SESデメリット2.労働者のデメリット
準委任契約は成果物責任がないため、仕事の役割や作業範囲が曖昧になって、IT技術者が想定していた範囲外の仕事を任される可能性があります。
その場合は採用面談で聞いていた話と違うことをSES営業にエスカレーションしたり、契約書に業務内容の範囲を明記してもらうよう対策が重要となってきます。
7. まとめ.
SES営業としては、これらの契約形態の違いを理解し、クライアントのニーズに最適な契約形態を提案することが重要です。
それぞれの契約形態がどのような状況やニーズに最適かを理解することで、より効果的な営業活動を行うことができます。
また、契約形態の選択は、プロジェクトの成功だけでなく、長期的なクライアント関係の構築にも影響を与えます。
それぞれの契約形態の特性と利点を理解し、適切に活用することが求められます。
この記事が、SES営業の皆さんの参考になれば幸いです。